こんにちは、ひよこ(@yutotte_nambo)です。
今回はこちらの本をご紹介します。
経営・金融 のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして、企業・金融機関・地方公共団体等への助言・提案を行っている中原圭介氏の著書です。
2020年の東京オリンピック以降の日本経済や国民生活がどうなっているのかについて、日本の企業や雇用、賃金にスポットをあてながら、冷静に述べたものです。2020年前後から世界経済の大きな流れが変わるなか、少子高齢化が世界でいち早く進む日本は、ITやAIといった技術革新によって本当に国民生活を豊かにできるのか――。
タイトルの通り、来たる日本の未来における避けられない問題・現実に焦点を当てた内容となっています。
少子高齢化や近代のテクノロジーがもたらす労働市場の変化、特に自動車産業についての言及が多いです。
他には、興味深い内容として、技術革新と幸福について述べている点が挙げられます。
ザックリとした所感
こんな人におすすめ
- 投資家
- 自動車産業従事者
- 経営者、特に地方の会社
- 就活生
こんな方々におすすめです。
人口動態とGDPは比例しますし、人口の推移は大きく動くことはないので概ねの未来の予想が容易です。
また、ITへの言及や自動車産業、地方企業に関してもよく書かれています。
改めて市場を見直すことができるので投資家の方は読むべきだと感じました。
自動車産業従事者も必読でしょう。
日本だけでなく、欧州や中国のEVシフトに伴うエネルギーコストや労働市場の変化に関して述べられているからです。
著者は少子高齢化に起因する日本の危機は避けられないと結論づけています。
2008年にピークをつけた日本の人口は総務省の推計によると、少なくとも2040年頃まで人口減少に歯止めは効きません。
しかし、30、40年後の日本の人口に関してはそう暗くない兆しがあるとも著者は述べます。
それが、地方企業による日本再興の可能性です。
日本を代表する建機メーカー小松製作所を例に挙げています。
また、幸福と賃金、出生率と居住地についてもフォーカスします。
就職活動を控えた学生さんや将来子供がほしい方も一読の価値はあるでしょう。
全体をザックリまとめ
全6章構成です。
第1章 世界金融危機「再来」の可能性
第2章 日本経済を蝕む最大の病
第3章 2020年以後の日本の雇用
第4章 2020年以後の日本の企業
第5章 2020年以後の日本の賃金
第6章 生き残る自治体と転げ落ちる自治体
第1章
世界のGDPのトップ3である米国、中国、日本を含め世界的に債務額が大きくなっています。
演繹的な結論になりますが、歴史を振り返ると現在の水準ではいつ暴落が起きてもおかしくないようです。
第2章
少子高齢化による人口減少に由来する経済停滞が必ず訪れます。これは周知の事実でしょう。
2025年問題と呼ばれる団塊世代による後期高齢者の急増が医療費・介護費増をもたらします。
消費税等での既存の税収を大きく上回るため、徴税が上がることも覚悟しなければなりません。
第3章
巷ではAIが雇用を奪うという意見や、一部の労働が機械に置き換わることは過去にも事例があり代わりに新たな仕事が創出されるという意見があります。
ただし、今回の機械化は過去に類を見ないくらい来たる大きな変化と著者は言います。
その原因は圧倒的な人件費の削減です。
20世紀までの機械化は物価を押し下げ、新たな雇用を多く創出しました。
しかし、21世紀の変革は以前ほどの雇用を生み出すことはないと主張します。
第4章
電気自動車へのシフトは時代の潮流となっています。
普及にかけて多くの問題を抱えながらも、それら問題解決の兆しがあります。
EVシフトがなされると、自動車産業の雇用に荒波が立ちます。
部品数減少、IT企業との競争が必至、組み立てラインの簡素化、所有から共有のシフトなどが原因の雇用者激減です。
第5章
所得における豊かさの実感は「可処分所得の増加」と「実質賃金の上昇」によるものだと断定します。
よりよい福祉の実現が要求される中で前者は期待できず、後者の実現が望ましいようです。
しかし、現実的には「可処分所得の増加」>「実質賃金の上昇」となるので、大局的に見て所得は減っていきます。
第6章
東京圏の一極集中が少子高齢化の原因のひとつの述べられますが、地方回帰することでその問題を取り除く可能性があるようです。
生活コストの大きい都会から地方への移住が有効打のひとつとなります。
投資家の利益追求が短期的スパンから功利的で長期的なスパンになることも望ましいとも述べています。
気になるポイント
ひよこの独断と偏見で所見を述べます。
「失われた 20 年」と呼ばれるまでに長期化した最大の理由は、不良債権の膨張そのものではなく、政府も銀行も企業も問題の解決を先送りし、無駄に時間を浪費したということなのです。
こちらは日本のバブル崩壊の原因は銀行の不良債権ではなく、問題の先送りが本質であるという著者の主張です。
そもそも労働者の賃金はバブル崩壊後の1997年まで名目でも実質でも増加していました。
経済主体のひとつである家計は持ち堪えていたにも関わらず、早急な対策を起こさなかったことが原因です。
同様のケースとして、本書のテーマのひとつである少子高齢化も挙げられます。
平成生まれのひよこの小中高時代の教科書にも少子高齢化が日本の問題だと書かれていました。1989年頃まさに平成元年から問題として取り上げられていました。
対策を練ることが出来たであろう平成初期から後回しにしたことで、茹でガエル状態となり取り返しの付かないことになりました。
こちらの本の隠れた主張として、問題は後回しにしないというものがあると感じました。
問題を後回しにしない仕組みづくりが必要です。
日本を例に取ると、政策が短期的でその場しのぎであることが問題でしょう。
マジョリティである高齢者の票が当選者に直結するので、高齢者が優遇されがちです。そして、高齢者のご機嫌を取るための政策に寄っている印象もあります。
失礼な言い方ではありますが、老齢者と比較すると、余命が長く償却年数の多い若者への投資のほうが国スケールで見ると得となることが多いです。
教育費への充当なども必要ですが、将来的な医療費を抑える策として国を挙げて予防医療に注力することも考えられます。
少しずつでも良いので若年層への支援、子育て支援が必要です。
という25歳のひよこの主張でした。
おわりに
日本の未来について知りたい。
AIを含む数多くのイノベーションは我々の生活をどう変えていくのか気になる。
そんな方にはぜひ一読することを勧めます。